鏡を見るたび、あるいはシャワーを浴びるたびに、排水溝にたまる髪の毛の量にため息をつく人は少なくないでしょう。年齢やストレス、生活習慣の乱れが原因だと考えがちですが、時としてその背後には見過ごせない病気が隠れている可能性があります。単なる美容の問題として片付けず、体からの重要なメッセージとして受け止めることが大切です。抜け毛が急激に増えた、特定の箇所だけが抜ける、髪質が大きく変わったといった変化は、注意すべきサインです。例えば、甲状腺機能の異常は、髪の成長サイクルに直接影響を及ぼす代表的な内分泌疾患です。甲状腺ホルモンが過剰になっても不足しても、髪は細くなり、抜けやすくなることが知られています。また、膠原病などの自己免疫疾患も、免疫システムが誤って毛根を攻撃することで脱毛を引き起こすことがあります。特に円形脱毛症は、自己免疫が関与している代表的な例であり、ストレスが引き金になると思われがちですが、体内の免疫バランスの乱れが根本にあるのです。さらに、鉄分が不足する鉄欠乏性貧血も、髪の成長に必要な栄養素であるヘモグロビンが不足し、頭皮まで十分な酸素が届かなくなるため、毛母細胞の活動が低下し、結果として抜け毛の一因となります。これらの病気は、抜け毛以外にも倦怠感や動悸、息切れ、めまい、皮膚の乾燥、爪がもろくなるといった様々な症状を伴うことが多いため、髪の変化と合わせて全身の状態を注意深く観察することが早期発見の鍵となります。自分の抜け毛は大丈夫だろうかと軽く考えず、いつもと違うと感じたら、それは専門家に相談するべきタイミングなのかもしれません。自己判断で様子を見る時間が、根本的な原因の発見を遅らせ、治療がより複雑になってしまう可能性もあるのです。体は言葉を発しませんが、髪を通して私たちに語りかけているのかもしれません。