かつら

美容師が語る湯シャンのメリットと注意点

都内で美容師として長年お客様の髪と頭皮に触れてきた私ですが、近年「湯シャン」について尋ねられる機会が増えてきました。湯シャンとは、シャンプー剤を使わずにお湯だけで髪と頭皮を洗う方法のことです。これには確かにいくつかのメリットが考えられますが、同時に注意すべき点も存在します。まずメリットとして挙げられるのは、頭皮への刺激を軽減できる点です。市販のシャンプーの多くには、洗浄力の高い界面活性剤が含まれています。これが必要以上に皮脂を奪い、頭皮の乾燥やかゆみ、バリア機能の低下を引き起こすことがあります。湯シャンにすることで、これらの化学的な刺激から頭皮を守り、皮脂の過剰な除去を防ぐことができます。結果として、頭皮が本来持つ保湿機能が回復し、乾燥やフケが改善されるケースがあります。また、皮脂バランスが整うことで、過剰な皮脂分泌が抑えられ、頭皮のべたつきが軽減されることも期待できます。さらに、シャンプーによる髪の物理的な摩擦や、すすぎ残しによるダメージも避けることができます。これにより、髪本来のツヤや手触りが戻ってくる方もいらっしゃいます。一方で、注意点もいくつかあります。最も重要なのは、全ての人に湯シャンが適しているわけではないということです。例えば、皮脂分泌が活発な脂性肌の方や、毎日整髪料を多用する方の場合、お湯だけでは汚れや皮脂を十分に落としきれず、毛穴の詰まりや雑菌の繁殖、臭いの原因となる可能性があります。また、湯シャンを始めたばかりの頃は、一時的に髪のべたつきやごわつきを感じることがあります。これは、頭皮の皮脂バランスが新しい洗浄方法に適応するまでの移行期間と考えられますが、この期間が不快で断念してしまう方も少なくありません。正しい湯シャンの方法を実践することも重要です。ぬるま湯で時間をかけて丁寧に頭皮をマッサージするように洗い、しっかりとすすぐことが基本です。ブラッシングで事前に汚れを浮かせたり、洗髪後のドライをしっかり行うことも大切です。もし湯シャンを試すのであれば、まずは週末だけなど、徐々に慣らしていくことをお勧めします。そして、ご自身の頭皮や髪の状態をよく観察し、かゆみや赤み、フケの増加などの異常を感じたら、無理せずシャンプーの使用に戻したり、専門医に相談したりすることが賢明です。