薄毛対策研究室

2022年12月
  • 女性のヘアサイクル、男性との違いとホルモンの働き

    AGA

    基本的なヘアサイクルのメカニズム、すなわち「成長期」「退行期」「休止期」という3つの段階を経るという点は男女共通です。しかし、女性のヘアサイクルにおいて特に重要な役割を果たすのが、女性ホルモン、中でもエストロゲン(卵胞ホルモン)です。エストロゲンは、髪の成長期を持続させ、髪の太さやハリ、コシ、そしてツヤを保つ働きがあります。エストロゲンの分泌が活発な時期は、髪が健康に育ちやすく、抜けにくい状態と言えます。一方、男性ホルモンであるアンドロゲンも女性の体内には少量ながら存在しており、このアンドロゲンが何らかの理由で過剰になったり、女性ホルモンとのバランスが崩れたりすると、ヘアサイクルに悪影響を及ぼし、薄毛の原因となることがあります。男性の薄毛、特にAGA(男性型脱毛症)の主な原因となるのは、テストステロンが変換されたDHT(ジヒドロテストステロン)です。男性の場合、DHTの影響で前頭部や頭頂部の髪の成長期が著しく短縮され、特徴的なパターンで薄毛が進行します。女性の場合、DHTに対する感受性は男性ほど高くなく、また、副腎や卵巣で産生されるアンドロゲンをエストロゲンに変換するアロマターゼという酵素の働きも活発であるため、男性のようなM字型やO字型の典型的な薄毛になることは比較的稀です。女性の薄毛は、頭部全体がびまん性、つまり広範囲にわたって均一に薄くなる「びまん性脱毛症」や、分け目が徐々に広がり、地肌が透けて見えるようになる「女性男性型脱毛症(FAGA)」といったパターンが多いのが特徴です。女性のヘアサイクルは、ライフステージにおけるホルモンバランスの劇的な変動によっても大きな影響を受けます。例えば、妊娠中はエストロゲンの分泌量が著しく増加するため、髪の成長期が延長され、通常よりも抜け毛が減る傾向があります。しかし、出産後はエストロゲン濃度が急激に低下するため、成長期にあった多くの髪が一斉に休止期へと移行し、「産後脱毛症」と呼ばれる一時的な抜け毛の増加が見られることがあります。これは通常、半年から1年程度で自然に回復へと向かいます。また、更年期を迎えると、卵巣機能の低下に伴いエストロゲンの分泌量が大幅に減少し、相対的に男性ホルモンの影響が強まるため、髪が細くなったり、抜けやすくなったり、全体のボリュームが失われたりといった変化が現れやすくなります。

  • AGAの治し方。生活習慣の見直しが治療を後押し

    円形脱毛症

    AGA、男性型脱毛症の「治し方」として、医療機関での専門的な治療は非常に重要ですが、それと同時に、日々の生活習慣を見直し、改善していくことも、治療効果を最大限に引き出し、健康な髪を育む上で欠かせないサポートとなります。薬物療法などの専門的な治療と並行して、以下の点に注意して生活習慣を整えていくことで、AGAの進行を遅らせ、より良い状態を目指すことができるでしょう。まず、最も基本となるのが「バランスの取れた食事」です。私たちの髪の毛は、主にケラチンというタンパク質から構成されています。そのため、肉類、魚介類、卵、大豆製品など、良質なタンパク質を十分に摂取することが不可欠です。また、髪の成長や頭皮の健康を維持するためには、ビタミンやミネラルも重要な役割を果たします。特に、亜鉛はケラチンの合成を助け、髪の成長に不可欠なミネラルです。ビタミンB群は頭皮の新陳代謝を促進し、ビタミンCはコラーゲンの生成を助け、ビタミンEは血行を改善する効果が期待できます。これらの栄養素を、緑黄色野菜や果物、海藻類などからバランス良く摂取するよう心がけましょう。インスタント食品やファストフード、脂質の多い食事、過度な糖分摂取は、栄養バランスを崩し、頭皮環境を悪化させる可能性があるため控えるのが賢明です。次に、「質の高い睡眠」を確保することです。髪の成長を促す成長ホルモンは、主に私たちが眠っている間に分泌されます。特に、入眠後最初の深いノンレム睡眠時に多く分泌されると言われています。毎日規則正しい時間に就寝・起床し、十分な睡眠時間、一般的には6時間から8時間程度を確保することが、ヘアサイクルを正常に保ち、髪の健やかな成長をサポートします。そして、「ストレスを適切に管理する」ことも大切です。過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮の血行不良を引き起こします。また、ストレスホルモンであるコルチゾールの過剰な分泌は、ホルモンバランスにも影響を与え、AGAの進行を早める可能性があります。適度な運動や趣味の時間を持つ、リラックスできる音楽を聴くなど、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。さらに、「禁煙」も強く推奨されます。喫煙は、血管を収縮させて頭皮への血流を悪化させるだけでなく、AGAの原因物質であるDHTの濃度を高める可能性も指摘されています。