AGA治療における「攻め」の薬として、発毛を強力に促進するのが「ミノキシジル」です。ミノキシジルには、頭皮に直接塗る「外用薬」と、錠剤を飲む「内服薬(ミノタブ)」の二種類がありますが、この二つは、副作用のリスクにおいて、大きな違いがあります。まず、「外用薬(塗り薬)」の副作用は、主に塗布した部分の皮膚に現れる「局所的」なものが中心です。最も一般的に見られるのが、頭皮のかゆみ、赤み、発疹、フケ、かぶれといった、接触皮膚炎の症状です。これは、ミノキシジルの成分自体が肌に合わない場合や、基剤として含まれるプロピレングリコールなどの添加物に対するアレルギー反応が原因で起こります。用法・用量を守っていれば、成分が全身に吸収される量はごくわずかなため、後述する内服薬のような全身性の副作用が起こる可能性は極めて低いとされています。一方、「内服薬(ミノタブ)」は、有効成分が血流に乗って全身を巡るため、その副作用もまた「全身性」のものとなります。ミノキシジルは、もともと血圧を下げる降圧剤であるため、その血管拡張作用が、心臓や血管系に影響を及ぼす可能性があります。具体的には、血圧の低下によるめまいや立ちくらみ、心臓が過剰に働くことによる動悸や息切れ、胸の痛みといった症状です。また、体内の水分バランスに影響を与え、顔や手足がむくむこともあります。そして、見た目の変化として顕著なのが「多毛症」です。薬の成分が全身の毛根に作用するため、髪の毛だけでなく、腕や足、顔の産毛までが濃くなってしまうことがあります。これらの全身性の副作用のリスクがあるため、ミノキシジル内服薬は、日本ではAGA治療薬として承認されておらず、医師の厳格な管理下でのみ処方されるのです。外用薬の安全性と、内服薬の高い効果とリスク。この違いを正しく理解し、自分に合った治療法を選択することが求められます。